以前にAS110がオメガかどうか判らないと書きましたが,オメガの定義が非常に曖昧であるため,その最も後期にあたるAS110は微妙な立場であるためにあえて明言を避けた部分があります.アメリカの販売店でオメガと呼ばれていたモデルがAS110までであるのは確かなようですが,アメリカ製か否かで分けたほうがより理解しやすいかもしれません.
アメリカン・セルマーの終末モデルとして1982年から83年に作成されたとされるオメガですが,その最終モデルがAS110となります.いわゆるアメセルとSelmer USAが混乱を招いているようですが,アメセルとは日本で呼ばれている通称であり,昔からSelmer USAであったと考えたほうが混乱は少ないでしょう.アメリカの職人が83年に大量解雇されますが,それまでに作り続けられたモデルということです.
ではいわゆるアメセルとSelmer USAが区別される理由は何かというとアメセルと呼ばれるものが材料をフランスから輸入しアメリカでアメリカの職人により組み立てられたものを言うのに対し,アメセル以降のものは生産が台湾に移っていることです.
オメガで言えば162, AS100, AS110までがアメリカ製でシリーズとしてはこれで終了し,AS220(LaVoix)のシリーズから台湾に生産拠点が移っているようです.
AS110まではプロモデルとしてフランス製のserie IIと並行して販売されていたようで,価格設定はserie IIより若干高かったとのこと.一方でコルクの取り付け方などは最後の混乱の中にあったためか雑とのコメントもありました.恐らくこのあたりは個体差が大きい部分でもあるのかもしれませんが,私が持った一台はかなり良い精度のものだったのかもしれません.
AS200以降はシリアル番号も全く異なってきており,Ωの刻印を有するstudent model(MG 296)は当然全くの別物となっています.BundyやSTDモデルもあるようですが,これらはアメセル時代のものとは明らかにstudent modelとして区別されています.
ちなみに最近の台湾製のサックスの精度が良いこともあってかLa Voixのモデルも人気が出ているとか.現行機種でもありますのでオークションで見かけることは殆んどないのですが,気になる機種ではあります.